【本】『氷菓』 米澤穂信 角川文庫 2001年初版発行

ぎばーブック~ギバー(Giver)からの「本」の紹介

文学★★

紹介文

姉から「古典部」に入部することを命じられた折木奉太郎。入部当日、小さな事件の推理をする羽目に。ある日女性部員から、伯父にまつわる過去の記憶を取り戻してほしいと頼まれる。それは「古典部」に関係していた。部員4人が少ない情報をつなぎ合わせて真実に近づくミステリー。

きっかけ、紹介文より詳しく

子供が出版社主催のアート・コンテストで賞をもらった。賞品として、本を20冊プレゼントしてもらえることになった。親である私が子を差し置いて、最近の売れっ子作家の中から、裏表紙を読んで面白そうなもの20冊を選んだ。そのうちの1冊。(当面はこのシリーズを書いていく予定。)

米澤穂信は2作目である。数年前に「満願」という作品を読んだ。ミステリーが読みたくなって、検索したところ、もっとも評判が高かったので買ったと記憶している。実際、読んで面白かった。「満願」は6作品が収録されている短編集。今回の「氷菓」は中編だ。Wikipediaによると、これは氏のデビュー作であることが分かった。学生時代からネット小説サイトを開いて作品を発表していたようで、そこでの反響が大きかったと言っているので、作品の原型は学生時代に書いていることになる。

推理小説にもいくつかのカテゴリーがあるようだが、この本は学生ものであり、ライトノベルと言ってもよいだろう。

推理小説は、発生した事件の解決に向けて、その過程を描くものなので、ネタバレはどうしても許されない。推理小説以外の小説であれば、私のネタバレ読書体験記を読んだとしても、なお読んでみようと思う人が、いると信じて書けるのだが、ミステリーは、そうはいかない。

そのため、事件のさわりだけを書いていきたい。紹介文にあるように、古典部に入った初日から、折木奉太郎はちょっとした謎の解決を迫られる。それから、図書館の本の貸し出し記録の異常さの謎解きをする。その推理力に感心した同級生が、折木に相談を持ち掛ける。それはなかなかの難題だった。
古典部は気が付けば4名が加入していて、彼ら全員で問題解決に当たることになる。

折木が一人スーパーな能力を有する名探偵な訳ではなく、関係者が皆、感じたことを一つ一つつなぎ合わせて、推理に導いていく仕立てとなっている。その点、折木奉太郎は、シャーロック・ホームズや刑事コロンボとはちょっと違って、普通の学生でしかない。そのキャラクター設定と、小説の構想が面白い。

Wikipediaの「作風」欄に以下のように書かれている。「推理小説の中でも青春ミステリと呼ばれるジャンルにおいて、『日常の謎』を扱った作品を主に発表している。・・・米澤は自著について、これらの作品群に通底するテーマは『全能感』であり、思春期における全能感の揺れ動き、変化していく過程を書いてきたと述べている。」
なので、青春を過ごす登場人物全員の『全能感』。これが彼の描きたい世界観なのだと思う。

折木は最小効率を好み、面倒くさいことは一切したくない性格だ。しかし、物語はそれと違って彼がどんどん面倒くさいことに巻き込んでいく。そしてあるとき、自分でもなんでこんなことしているのかと自問自答する。そんな心の変化、いや心の奥の声を聞くシーンなども出てくる。純粋ミステリーではない面白味が、この作品には備わっている。

「氷菓 米澤穂信 角川文庫」カバー写真
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