8月22日(日)に、横浜市長選挙が行われ、マスコミが事前に報道していた通り、前横浜市立大医学部教授の山中竹春氏が当選した。今さらなのであるが、これについては触れたいと常々思いながら1週間以上が経過してしまったので、ここで書いておきたい。
立候補者数 8有権者数 3,103,678投票率 49.05%開票終了
- 山中竹春 506,392(33.6%)
- 小此木八郎 325,947(21.6%)
- 林文子 196,926(13.1%)
- 田中康夫 194,713(12.9%)
- 松沢成文 162,206(10.8%)
この結果を見ると、山中氏の圧勝と言える。現職の林さんはIR誘致賛成だったので、市民はそれにNOを突き付けた。小此木氏はやはり自民党の組織票が大きかったのだろう。田中康夫氏は長野知事としてまたタレントとして、いまだに一定の知名度があるんだなと思った。松沢氏は神奈川県知事だったにも係わらず伸びなかったなという印象である。
インプットのために、以下の2つを参考にした。
横浜市長選挙(候補者情報・選挙公報)(令和3年8月22日執行)
選挙ドットコム 横浜市長選挙2021 候補者一覧【経歴・政策・選挙公報まとめ】
YouTube 横浜市長選挙立候補者と公開Q&Aセッション!|乙武洋匡が聞く!横浜市長選挙2021|候補者比較
山中氏が圧勝したのは、「横浜をコロナとカジノから守ります」という分かりやすいスローガンと、「候補者のなかで唯一のコロナ専門家」として、分かりやすく「縦割り行政の弊害」と「県との対話がない」問題点を指摘したことにあると思う。この問題点は、上記「公開Q&Aセッション」で話されていた。このセッション自身は、YouTubeの視聴者数が1万7千と非常に少ないので影響力はないが、他のインタビューでもその都度答えていたと想像する。
コロナとカジノは併記しながらも、1番目をコロナ、2番目をカジノにした順番も意味があったと思う。
「公開Q&Aセッション」で、カジノに反対する理由を、単に依存症といったネガティブ要素を示すだけでなく、これからのビジネスモデルとしては破綻していると喝破した点、非常に説得力があった。この時点で、私が市民なら彼一択だなと感じた。
なお、選挙公報も非常に分かりやすい。中身もさることながら、メッセージの伝え方も上手いと思う。
林氏にとっては、有権者の7割がカジノ反対という状況であり、初めから極めて不利な状況であった。しかも最後、勝てないと判断した自民党に裏切られてしまった。これは可哀そうとしかいいようがない。ご本人は「徹底したコロナ禍対応」を選挙公約の第一に上げていらっしゃったが、感染者数が増え続けている今、市民の期待感を増やすものにはならなかったと思う。
小此木氏は、最後までカジノ反対は嘘ではないかという疑惑を払拭できなかったと思う。マスコミの報道の仕方も「疑惑」を増幅させた可能性がある。
また、選挙公報では、山中氏と同じく、冒頭に「今の声を聞く―新型コロナ対策最優先、横浜へのIR誘致完全取り止め」と書いているのだが、字が小さくてそこが目にいかない。
これはどこかの記事で読んだのだが、菅首相の懐刀として、東京オリンピックの跡地をIRに利用するため登場したと書かれていた。さもありなんである。そう思って選挙公報を読み返すと、わざわざ「横浜への」と書かれている。もしこれが本当だとすると、菅首相のやり方は強引であまりに性急だったのではないか。
田中康夫氏の選挙公報は非常に独特だ。具体的な施策が列挙されていて、面白いが、コロナについてほとんど言及されていない(「脱・飲食店イジメ」のみ触れる)のは、ちょっと民意を読み誤ったのではないかと感じた。
松沢氏の低得票数が一番意外だった。知事としての評価がそんなに低かったという印象はない。ところが、田中康夫氏よりも票を取れなかった。
私が感じた違和感は、「公開Q&Aセッション」 でおっしゃっていたIR誘致撤回の代替案として示した、「英語の町横浜を創る」であった。私は個人的には今英語熱が高く、とにかく英語ができるようになりたいと思っている。でも、市政から「第2公用語」(選挙公報に明記)と言われてもピンとこない。むしろ嫌だと思った有権者も多かったのではないかと想像する。
選挙公報がすべてではないが、その人の思いがつまった、最も大切な自己アピール文書に、1番をカジノ、2番をコロナにしたのも、市民の声をしっかり聞き取れていなかったのかなとも思った。
最後に、改めて圧勝した竹中氏の選挙公報の細部を読むと、バランスがいいなと思う。「希望者へのワクチン接種・・・」、「いつでもどこでもPCR・・・」、「カジノ抜きの代替案」などなど。私は横浜市民ではないが、竹中氏の今後に強く期待したい。現市政ができなかった縦割り行政を変えていくのは、政治家・官僚の経験もないので、困難を極めると思うが、着々と進めていってほしい。