鷲尾龍一(日経ビジネス記者) 「ぐるなびが脱グルメサイト依存 ウーバー、PayPayと戦う険しき道」
ぐるなびの2022年3月期の第2四半期決算が22億円の最終赤字だそうだ。前年同期は54億円の赤字であるから回復基調という記事であるかと思いきや、全然違っており、記事は非常に厳しいトーンで貫かれていた。
「(グルメサイトによる販促支援という)本業は、市況に左右されてしまうということを、痛いほど感じた2年弱だった」というのは、11月4日の記者会見で杉原社長が発した言葉である。
ここで、なるほどと思われるデータが紹介されているので、記載しておきたい。
外食向け予約システムを提供するトレタ(東京・品川)が、サービス導入先の約1万店舗の状況を集計したところ、11月1~7日の人数別の来店人数(19年と比較)は、「1~2人」が約97%、「3~4人」が約95%と回復したが、「5~6人」は約76%、「7~8人」は約61%、「9~10人」は約43%、「11人以上」は約24%にとどまった。緊急事態宣言の解除後も、宴会など大人数需要の回復は大きく遅れている。
「 ぐるなびが脱グルメサイト依存 ウーバー、PayPayと戦う険しき道 」 鷲尾龍一 日経ビジネス 2021/11/9
もう4名以下の会食は、ほぼ復活しているという事実にむしろ驚いた。一方、三密が浸透したため、パーティーはもう開催されることは難しくなった。この流れは当面変わらないだろう。
さて、ぐるなびのビジネス・モデルは、記事によれば、「販促支援」と「経営サポート」の2つの柱があるようだ。
前者は文字通り消費者の集客が収益をもたらす事業、後者は飲食店の経営面でのサポートが収益をもたらす事業である。
お客さんが「ぐるなび」でたくさん予約をして、お店に送客できれば、それに応じて手数料収入が入る。また、飲食店は、お客さんを集客するため、検索に出やすくするための固定料金を払う。
一方、経営面でのサポートとは、食材仕入れ、デリバリー、クラウド型POS、決済などのサポートを指している。
記事はその後、その競合を紹介している。
「飲食・外食産業のデジタル化」のことを「レストランテック」というらしい。レストランのインフラとなる要素である「提供チャネル」「食材」「人材」「システム」をデジタル化するということだろうか。
デリバリーでは、ウーバー、出前館、menuなど。モバイルオーダーでは、Showcase Gig、Retty、トレタ、ダイニー。グルメサイト「ホットペッパーグルメ」を運営するリクルートはシステムに多用のメニューを持ち、PayPayが決済で圧倒的な存在感を示しているのは言うまでもない。
先日紹介したタイミーも出てきた。トレタと人材支援分野で連携しているらしい。
読んで思ったのは、とんでもないレッドオーシャンだということ。コロナ前までは全然メジャーでなかったウーバーなどのケータリング、日本ではかなり遅れて浸透したキャッシュレス決済、モバイルオーダー(ジョナサンやカストのような、タブレット端末からオーダーするシステムはそのうちの一つ)が一般の店に登場するのは、本当に最近の事だ。
にもかかわらず、こんなにもプレーヤーがいて、生き残りに必死だということ。
これはまさに弱肉強食の世界であり、結局、どこかがその勝負に勝ち、大半は淘汰される。経営者の心中を察するに、1日も心休まる日はないのではないだろうか。
この記事は、食べログと「有料加盟店数」の比較も紹介している。
2021/6 | 2021/9 | 備考 | |
ぐるなび | 54,000店 | 61,000店 | 楽天グループから7月に約9,000店を事業承継 |
食べログ | 55,800店 | 58,500店 | カカクコム社の一事業 |
これに続いて、「コロナ前から続く『食べログ1強』がより鮮明になりつつある。」とまとめている。店舗数を見る限り、(実質減ったと考えたとしても、)これは少々ぐるなびに酷だと思った。
食べログは、カカクコムの傘下なので、単独で食べログ事業をどこまで開示しているのか分からない。ここまで言うのだから、収益で大きく水を開けられているのかもしれない。(有価証券報告書等を見れば分かるだろうが、現在この記事だけを読んで書いている。)
一消費者としては、果たして自分はどちらを使っているのか。全然気にしていない(サービスの差を比べて選んでいない)ので分からなかったが、「食べログ」であった。アプリをインストールしていた。Go To EATでキャッシュバックのために加入したのだと思う。