佐藤嘉彦(日経ビジネス記者) ソニー、テレビ販売で首位争い 実を結んだ顧客接点重視の改革
家電量販店の販売データを集計する調査会社BCNによると、2004年10月の集計開始以来、テレビ全体の販売台数はシャープが首位を独走してきたそうだ。ところが、2021年7月にソニーがトップに立ち、9月には東芝のテレビ事業を引き継いだTVS REGZAがトップを取ったという。今は三つどもえの戦いになっている。
ソニーが上昇した要因を、記者は「消費者が求める画面の大型化を進めた」と分析している。
昔は「今、何インチのテレビをお使いですか」というのが、営業マンの定番フレーズだったそうだ。これでは、大きなサイズの商品を売り込むとしても、少し上のサイズアップで終わってしまうという。
ソニーマーケティングの課長がインタビューに答えているが、「マンションの人気の間取りを徹底的に調べ、どの間取りにも、製品ラインアップで最大の85型テレビを置ける壁面スペースがあることが分かった」そうだ。
新たなフレーズは、「リビングは何畳ぐらいですか」。「それならば85インチが置けますよ」と切り出して、大きい順に売り込んでいくようになったという。
その他売り場の工夫もいろいろ書かれているが、マーケティングというのは、本当に人間の心理を突いている。また、常に発想の転換が求められる。この世界で成績を出し続けているマーケッターには、本当にかなわないと思う。
売れる秘訣がもう少し詳しく書かれているので、興味を持った人はぜひ本文をご一読いただきたい。
西岡杏 他2名(日経ビジネス記者) 「最近「ゆるブラック」増えてない?覆面エージェント3人が語る」
「ゆるブラック」という言葉があるらしい。「ブラックほどではないが、かなりブラックに近いグレー」のことを言うのかと思っていたらまるで違った。「働きやすいが成長もない、という企業」を「ゆるブラック」と呼ぶ。
- マーケティングというまさに花形の職場だったにもかかわらず、ブランド力が強すぎて「もっと自分のスキルが試せる所に行きたい」
- 会社自体は研修制度が体系化されていましたが、実質的な業務に関われるスピードが遅く「自分の成長につながりづらい」
これは例として書かれていたものだが、上司としてこんな風に言われて辞表を提出されたら、自分はどう思うのだろうか。
すでに自分は今までの人生で、4つの会社に従業員として雇用され、今は独立して1人でやっている。幸いなことに、3回も転職しているため、辞表を出す人については、常に寛容にならざるを得なかった。結果、「昭和」の理屈を持ち出して、説教をたれることは少なかったと思う。(慰留・引き留めは当然にしたが。)
そんな自分でも、こんな風に言われると、平常でいられるだろうかと思う。少なくとも経営者は、煮え湯を飲まされる気分かもしれない。
ただ、同時にこうも考える。今の時代は自分が社会人になった30年前とは何もかもが全く違う。不確実性は年を追うごとに増大し、5年後の会社の存続すら保証できない。とにかく、自己責任で生きていくしかない。実に厳しい時代である。
最後、「時代は『働きがい改革』へ」という小見出しで締めくくれられるが、「働きがい」というのはなんと定義すればよいのだろうか。この記事では、とあるエージェントが「成長機会の提供」と書いている。「若い社長の登用」「失敗してもチャンスをもらえる」「DXの促進」を例に挙げている。「働きがい」というのは、個人個人で異なるので、必ずしも「成長機会の提供」だけで満たされるものではない気がしている。
また、米国の心理学者、フレデリック・ハーズバーグが「衛生要因・動機付け要因」の理論を唱えているらしいが、日本語訳されてしまうとよく分からない。文章を追っていくと、「働きやすさ」と「働きがい」のバランスのようなことが書かれている。「働きがい」のキーワードとして「裁量」という言葉を用いている。
みなそんなに上昇志向が強いのだろうか。考えさせられる記事であった。
その他
岡田達也(日経ビジネス記者) 「調達巧者ファナックに未曽有の試練 中国から矢の催促も生産に遅れ」
これは記事に内容というよりは、以下のファクトをメモっておいてもいいかなと思った。
山口CEOは「半導体や電子部品、鉄、銅線、樹脂など、あらゆる部品や素材が入手難に陥り、ロボットやFAの納期が延びてしまっている」と話す。
「例えば半導体では、特定の何かというより、あらゆるものが足りない。入手できても納期が長い。過去に経験がない」と山口CEOは指摘する。
「調達巧者ファナックに未曽有の試練 中国から矢の催促も生産に遅れ」 岡田達也 日経ビジネス 2021/11/2
半導体不足のあおりは、私の新規PC購入で経験したばかりである。