藤原明穂(日経ビジネス記者) 「『強制出社』と決別を 働き方のコロナ前回帰には代償」
ワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長へのインタビュー記事。いくつか興味深い事実があったので記載したい。
「残念だったのは、他国ほどは変化しなかったことです。海外では、日本とは比較にならないほど徹底的に働き方が見直されました。」
これは、コロナで日本の働き方は変わったが、世界はもっと徹底的に見直したという話である。これは私の肌感覚と違うのでびっくりした。もっとも諸外国との比較ができていた訳ではない。日本の中における劇的な働き方の変化を目の当たりにして、びっくりしていたのだが、諸外国と比べたら大した変化ではなかったということか。
21年8月のデル・テクノロジーズによる調査では、完全テレワークと併用でテレワークが主流の比率が合わせて14%、併用でオフィスワークが主流が30%、完全オフィスワークが56%とある。これは何の調査かというと、「ワクチン接種が浸透し、新型コロナが収束に向かった場合に働き方どうなると思うかという質問に対する回答」である。
日本人の過半数以上が、ポストコロナはBeforeコロナになると考えているのである。これは本当だろうか。アンケート調査を疑うつもりはないが、私自身、ポストコロナは当面Withコロナだし、元には絶対に戻らないと思っている。
コロナ禍に投資をしてこなかった日系企業が負う代償として3つ挙げています。このいずれもが、Beforeコロナを前提にしたものの考え方であった。リアルの場所に通うという前提、リモートでの指揮命令系統の機能、通勤でフルタイムができなくなる人材の損失。
でも本当にそうなのか、もう少しエビデンスが知りたいと思った。私が働いていた前職は、ある意味グローバルの力が強かったので、例外だったのかもしれないが、つい先日会った同僚曰く、「月3-4回の出社で私は出社している方です」と言っていた。
氏は、「生産性の向上に報酬を」という。ある大会社の例を取って、「チームで有休消化80%以上、残業時間の平均が20時間以下を達成したら、一人最大6万円を支給する制度を設けました。」と書いている。
「生産性が上がったことで浮いた残業代を報酬として分配したため、コストをかけずに生産性を向上に成功しました。」と。これは、残業代が減って、特別報酬を出したわけなので、会社にコスト増がなかったというのはその通りだろう。一方、「生産性の向上に成功」と、さらっと言っているが、本当に生産性が向上したのかどうかは、この記事では分からなかった。生産性を向上するのは、そんな簡単は話ではないので、様々な苦労があったものと想像する。
「ライフが維持できないから転職する人はとても増えています。」これはその通りだと思う。まさに正論でもある。一方で、「ゆるブラック」という言葉もできてしまった。企業経営のあり方は本当に難しくなったと、つくづく思う。