2021/7/8 東証新市場区分について雑感

東京証券取引所が2022年4月より、市場区分の変更を行うことが決まっている。
現在は、市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ(スタンダードとグロース)の4つ。これを、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つに再編成するというものである。

東証HPの「新市場区分への移行に向けて」から入ると、「市場構造の在り方等の検討」資料が大量に収められている。議論の詳細な経過はすべてすっ飛ばして、「現在の市場構造を巡る課題(論点整理)」だけみると、現状の課題を3つに絞っている。1)各市場区分のコンセプトが曖昧であり、多くの投資者にとって利便性が低い、2)上場会社の持続的な企業価値向上の動機付けの点で期待される役割を十分に果たせていない、3)投資対象としての機能性と市場代表性を備えた指数が存在しない。

私の言葉で言い換えると、1)各市場の位置づけが重複していて分かりにくい、2)市場第一部へのステップアップ基準が甘い、3)TOPIXがインデックスとして不適切、となる。

1)は東証と大証(大阪証券取引所)の合併の歴史の産物である。大証がベンチャー企業のための「ヘラクレス」を創設し、その後、店頭市場から変わったJASDAQ証券取引所を買収する(JASDAQ証券取引所もベンチャー企業のための「NEO」を創設していた)。大証時代に「ヘラクレス」「NEO」「JASDAQ」は、JASAQ市場に統合されたが、その際JASDAQ(スタンダード)とJASDAQ(グロース)の2つに移行した。そのJASDAQ市場を、今度は東証が(大証から)買収したのだ。その結果として、マザーズとJASDAQ(グロース)が併存することになった。
この重複を解消するには、JASDAQ(グロース)の銘柄をすべてマザーズに移行すればよい。

また、3)は後付けの理由だと思われる。「意見募集(論点ペーパー)」に書かれていないからだ。また、東証第一部の全銘柄を対象とするTOPIXがインデックスとして不適切であるならば、すでに存在するTOPIXCore30や、TOPIX100をメジャーのベンチマークにすればよいだけだ。

結局、今回の市場再編は、今までの市場第一部へのステップアップ基準が甘すぎたために行われるものだと理解する。一旦市場第一部に上げてしまった企業を、市場第一部の上場維持基準を厳しくして、市場第二部にダウングレードするのは、多くの反対意見を生み出すだろう。そのため、もっともらしい理由を3つ挙げて市場全体の再編とする。ただし、その本当の狙いは、小規模あるいは取引が活発でない市場第一部の会社をスタンダードに落とし、全体の社数バランスを取ることであると推測した。

ちなみに、上場廃止基準を一気に厳しくして、市場から締め出すという方法も取り得る訳だが、そうはなっていない。新グロース市場の上場維持基準は、現行のJASDAQ上場廃止基準(上場維持基準)より多少厳しくしているものの、新スタンダード市場も含め、多くの企業が新制度移行により、上場廃止に追い込まれることはないであろう。

現在、市場別の上場社数は以下の通りである。

上場更新日第一部第二部マザーズJASDAQ(スタンダード)JASDAQ
(グロース)
TOKYO Pro
Market
合計
2021/7/82,19247437466337473,787社
東証HPより「上場会社数」

さて、6月27日の日本経済新聞によると、現行のままでは市場第一部からプライム市場に移行できない会社が570社あるという。この数字を単純に当てはめると、再編後の推定値は、以下の通りとなる。(570社はスタンダードに移行し、マザーズとJASDAQ(グロース)がグロース市場に移行すると仮定。)

一斉以降日プライムスタンダードグロースTOKYO Pro
Market
合計
2022/4/41,6221,707411473,787社

もしかしたら、着地見込み(落としどころ)から逆算して基準を作ったかと疑いたくなるほど、バランスの取れた数字になった。ただし、本当は、プライム市場は1,000社ぐらいにしたかったのではないか。